19世紀半ばから20世紀前半の東アジア世界では、近世から近代へと移行していくなかで、従来の国際秩序や社会の仕組みが大きく変容していきます。それは欧米諸国の影響や日本の近代国家建設に加え、科学技術の発展やヒトの移動など様々な要素が絡み合い、多様で複雑な様相を呈しています。そのような時代の中国史について、西太后が統治した清朝末期の政治史や中華民国期の土地調査事業を中心に研究しています。
自国や相手国の歴史・文化を学ぶ際に大切なのは、世界各地には多種多様な歴史・文化が存在し一様ではないこと、異なった歴史的背景を持つ民族や文化の絶え間ない交流によって各地域、さらには世界が形成されてきたことです。これらをふまえ、三重県内の小中学校、高等学校での出前授業、教員向けの講習・講演を行ってきました。また、三重大学歴史研究会の活動を通じて、三重県内の現職教員との交流も深めています。
21世紀の東アジア世界(日本・中国・韓国・台湾など)は、人と人との交流が、かつてより密接になっています。しかし諸国家・諸地域間の相互認識は、観光と大衆文化のレベルで進展を見せる一方で、歴史においては必ずしも深まっていないようです。また、頻繁に起こる歴史問題や領土問題は、各国家・各地域の歴史的経験が、現在に依然として作用していることを示しています。これらを理解するためにも、東アジアの歴史を学ぶことの重要性を伝えていければと考えています。
大阪大学特任研究員をへて、2010年より三重大学教育学部准教授、2021年より同教授。