null conditionは満たさないがweak null conditionは満たしているような非線形波動方程式系の初期値問題に対する時間大域解の存在は大きな未解決問題となっています。(2023年2月、英国の研究者による、反例を見つけたと主張する論文がarXivにアップロードされています。)完全な解決までは遠いのが現状ですが、少しずつではありますが意外な成果も挙げてきました。30年前に学んだ手法が役立つ場面がありました。
null conditionを満たすような、空間1次元における非線形波動方程式の初期値問題に対する時間大域解の存在は、Tatarによって1981年に発表されました。しかし、その論文は未出版のままでした。その後、米国の大学で学んだ若手研究者たちによって2018年に別の方法で解決されました。非常に斬新な不等式による証明で、大変に素晴らしい成果でありました。一方で、私自身は70年代終わりから80年代初頭に米国の研究者たちが用いた古典的で容易な手法で別証明を与えられることに気がつきました。これは、昔に研究していたことが、最近の考察とあわされることで、意外な成果につながった例だと思います。
国内外の最新の研究の成果を取り入れつつ、自分自身が得意とする方法を主として用いながら、未解決とされている問題を着実に解決していきたいと思っています。
1996.04~1996.06 日本学術振興会 特別研究員
1996.07~2003.03 東京都立大学理学研究科 助手
2000.10~2001.09 米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校 訪問研究員
2003.04~2014.03 三重大学教育学部 助教授(准教授)
2014.04~ 三重大学教育学部 教授
第四回福原賞,非線型波動方程式の時間大域解の存在とライフスパンの研究,2012.12,日本数学会・函数方程式分科会