光合成生物の1種、シアノバクテリア(藍藻)を中心に研究をしています。光合成研究で水から酸素を作り出すタンパク質複合体の機能解明にも貢献する生物で、植物の葉緑体とほぼ同等の機能をもちます。種類によってはマメ科の植物の根に寄生する根粒菌のように空気中の窒素をアミノ酸に変える窒素固定をし、さらにはフキやコケにも共生するといった多芸な生きものでもあります。極限環境のとされる砂漠にも南極にも棲息しています。身の回りでも芝生などで見かけるキクラゲのような黒い塊はイシクラゲでシアノバクテリアの一種です。乾燥にも耐え、地域によっては食料とされています。このような有用な光合成生物の特徴や機能を明らかにしたいと考えています。
自然界からシアノバクテリアの単離をしており、そのなかでもイシクラゲを中心に単離を進めています。無菌株を得ることで(1)、イシクラゲのほぼ全長のゲノム解析に成功しました(2)。放射線取扱主任者の資格を活かし、2011年の原子力発電所事故では放射線に関する講演、現地調査をした。その際、イシクラゲが放射性物質(を吸着した粘土粒子)を吸着している事(1)から、放射性物質除去資材の試作・検証をしました。また、この資材を植物栽培(荒廃土壌修復)へ応用するための試験も行いました。近年は単離培養を強化しており、様々な環境で棲息可能なシアノバクテリアの単離を進めています。単離したシアノバクテリアには宇宙環境(国際宇宙ステーション船外)への曝露実験に用いられた種類もあり、耐性に関する成果が得られつつあります(3)。
ゲノム情報は生物の設計図であり、これまでの遺伝子・タンパク質の機能解析のデータからから様々な生物の機能予測の助けとなります。光合成システムはエネルギー生産、物質生産に貢献しており、物質生産能力の向上に関与する因子について研究を進めたいと考えています。光合成システムの解明は進んでいるものの、まだ不明な点も多く、新しい機能を見つけるために生物探索を行い、生理的特徴、ゲノム情報と遺伝子機能予測などを通じて、有用な生物の機能と特徴を活かす研究を進めていきたいと考えています。また、研究を進めるために様々な分野も取り入れていきたいと考えています。
生態工学会 理事・次世代科学社会活性化委員会 委員長
日本宇宙生物科学会 代議員・科学者生活委員会 副委員長
宇宙理学メンバ
2023年 生態工学会賞(功労賞)受賞
第一種放射線取扱主任者
第一種作業環境測定士(放射性物質)