脳動脈瘤の発生、増大、破裂については、患者要素、動脈瘤要素、血行力学的要素などが関与していると考えられているが、未だその全貌はよく分かっていない。我々は三重大学およびその関連施設の協力を得て、未破裂脳動脈瘤の前向き登録データベースを作成し、実際に破裂した瘤とそうでないものについて、様々な要因との関連を調査している。特にここから抽出した膨大な画像データを用いた数値流体力学的解析には力を入れている。
これまで未破裂脳動脈瘤の壁肥厚や破裂に関与する形状学的、血行力学的要素を少しずつ明らかにしてきたが、今後さらにこのような要素を明らかにすることにより、今までの知見に基づいて経過観察されていたが不幸にも脳動脈瘤が破裂してしまったような症例を救えるようになると考えている。また特に脳血管内治療におけるデバイスの進化は著しく、新規治療デバイスによる治療効果の予測も積極的に行っており、最良の治療選択肢の提案につながると考えている。
未破裂脳動脈瘤のデータベースを拡充し、症例数を増やすことによって既存の研究成果の裏付けを行い、また新しい知見の獲得のために研究を継続する。研究成果の蓄積によって破裂に関与する患者・動脈瘤・血行力学的要素を明らかにすることにより、適切な生活習慣の改善や手術介入により、脳動脈瘤の破裂を予防できると考えている。また手術介入については、数値流体力学的解析にて、最も低侵襲でかつ治療効果の高い手術法を提供できると考えている。
2000年 三重大学医学部卒業、同脳神経外科講座入局
2008年 University of Wisconsinに留学、脳動脈瘤や脳虚血の研究に従事
2010年 三重大学医学博士を取得
2015年 三重大学医学部附属病院助教
2021年 同講師
日本脳神経外科学会専門医、指導医
日本脳血管内治療学会専門医、指導医
日本脳卒中の外科学会技術指導医
脳卒中専門医、脳卒中指導医