我が国をはじめ労働コストが高い先進国では、製品そのものの属性に基づく機能的便益に依拠し、価格競争を通じて収益を上げることは容易ではありません。企業には、価格以外の独自の価値を適切なマーケティングによって創出し、ブランドの評価を高め、高価格でも売れる製品やサービスを生み出すことが望まれます。このような問題意識の下で、消費財マーケティングの効果的な手法について研究しています。
ブランドや消費者の属性によって効果的なマーケティングの手法は異なります。例えば、さほど高級では無いブランドが高級ブランドのマーケティング手法を採用して価格プレミアムを獲得しようとしても、消費者は違和感を感じてブランド評価を低下させる可能性があります。研究を通じてこのような消費者心理・行動を明らかにし、その成果を消費財企業に対する戦略的示唆として提案しています。
最近の研究では、消費に基づく個人のウェルビーイングが、製品を供給する企業の社会貢献活動によってさらに向上することが明らかになっています。この点について研究を深め、企業業績、企業の社会貢献活動、および消費者のウェルビーイング向上を同時に成立させるマーケティング手法を検討したいと考えています。企業を自治体、消費者を住民と捉えると、こうした研究に基づく知見は、地域のウェルビーイング向上を目指す公共政策にも応用できそうです。
三菱商事でブランドビジネスに携わるとともに、国内外で消費財企業の役員を務めた後、研究者に転じ現在に至る。早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター招聘研究員、国際学術誌2誌の編集・査読顧問を兼務。
国内外でトレーディング、ファイナンス、M&Aを含む戦略投資、サプライチェーン構築、ブランド開発、及び消費財企業経営に携わると同時に、マーケティング論、ブランド論、消費者行動論の分野で研究を続け、2021年より本格的に研究者に転じた。Web of Science採録学術2誌の顧問を兼務。国内外で学術受賞6件。