自分とは異なる他者を尊重しよう。頭ではわかっていても、実際にそうした場面に出くわしたとき、戸惑う経験をされた方は少なくないと思います。私の研究しているヨーロッパ社会は、極めて多様な民族、社会集団を抱え、自分とは「異なる」人びととの共生をめぐる問題に長らく直面してきました。彼らが向き合ってきた問題を知ることを通じて、これからの時代における他者とは何か、共生とは何かを考えていきたいと考えています。
授業では現代まで続くヨーロッパの社会制度がどのような経緯で形成されてきたのか、そして現代のヨーロッパが他者との共生をめぐってどのような問題を抱えているのかを取り上げています。そこで人びとが何を思い、何に困っているのかを丁寧に読み解いてみることを大事にしています。一見自分たちとは遠い世界のようにも見えますが、学生さんたちはそれぞれの人びとに自分と繋がる部分を見つけ、そこから様々な問題への関心を広げてくれています。
私の研究分野に関心を持ってくれる学生さんには、将来、教員や公務員など、色々な側面から社会を支える機関に所属することを目指している人が多くいます。そして現代社会に生きる私たちは、様々な形で異文化、そして自分とは異なる他者の問題に直面せざるをえません。私の研究から得られる知見が、産官学の業界や分野を問わず、実際にそうした問題に立ち合い、困っている人たちにとって、何かのお役に立てればと考えています。
奈良県生まれ。神戸大学国際文化学研究科にて博士号を取得後、2022年度より三重大学人文学部文化学科講師。