人間の言語は、発音、文字、語彙など、表面的にはそれぞれ異なっていて、非常に多様なように見えます。しかし、その仕組みを詳しく調べてみると、音声、文法、意味に関して様々な点で共通した規則性が見られます。しかも、英語と日本語のように、歴史的、地理的、文化的に本来無縁と考えられる言語の間でもそれが見られることから、人間の言語には何らかの共通の仕組みがあるのではないかと考えられています。その仕組みとは具体的にどのようなものなのかを明らかにするために、主に日本語と英語を比較対照して研究しています。
上記の人間言語の文法の共通性は、人間の母語習得と密接に関係していると言われています。どの言語を習得する子どもも、生後4~5年の短期間で、複雑な文法知識を一様に正確に身に付けます。その知識には子どもが日常生活で接する言語情報からは得られないと考えられるものも含まれていることから、子どもは生得的に、全ての人間言語の基盤となる知識を持っていると見られています。言語の文法に共通性が見られるのもそのためだと考えることができます。従って、この分野の研究は、人間の言語能力の解明に貢献すると言われています。
現在行っている研究のテーマは、人間の言語の述語に関するもので、特に形容詞や名詞が主述語とは別に補語として現れる二次述語について、どのような仕組みでその主語と結び付き、解釈されるかという問題について、日本語や英語の事例を他言語のものと比較しながら考えています。また、日本語や英語も含めて世界の多くの言語に見られる二重他動詞文の構造や意味についても、まだ解明されていないと見られる問題があり、興味を持っています。
三重県出身、2002年 McGill University (カナダ・ケベック州) 言語学科PhD課程修了
平成28年~平成31年 日本英語学会大会運営委員会委員
令和3年~現在 日本英語学会 評議員