現代社会を支えるものの一つに情報の保存があり,日々大量の情報が生成されていて,情報爆発の時代とも言われています。そのため,大量の情報を高速かつ安価に記録・再生することが求められています。安価ということは,資源やエネルギーをあまり使わないということなので,エコです。そして,大学院時代から,コンピュータ用光磁気ディスク,音楽用光磁気ディスク,ハードディスクドライブなどのエコな磁気記録の研究を行ってきました。
ハードディスクドライブ(HDD)はエコな情報保存装置で,生成AIの発展も加わって,データセンターなどで大量の需要があります(2023年総出荷金額125億2700万ドル)。シーゲイト・テクノロジー,ウエスタンデジタル,東芝を中心に設立された情報ストレージ研究推進機構(ASRC)では,日本及び米国の大学に委託して,新しいHDDの研究を行っています。2007年にASRCへの加入を依頼され,研究成果を報告してきて,2011年にはASRCから論文賞を頂きました。
次世代ハードディスクドライブの候補の一つである熱アシスト磁気記録を用いた3次元記録の設計指針を,独自の確率論的計算を用いて考えます。従来のマイクロマグネティック計算と比べ,計算時間が短く,結果の物理的な解釈が容易で,設計指針を考えやすいという特長があります。また,他の磁気記録方式との比較を行い,ハードディスクドライブのロードマップを考えていきます。結果は逐次,情報ストレージ研究推進機構で報告します。
1985年キヤノン株式会社に入社し光磁気ディスクの研究・開発に従事。1991年より三重大学工学部電気電子工学科助手。1997年同物理工学科助教授。2009年同教授。2020年より特任教授(研究担当)。
大学院(博士課程前期・後期課程)時代の研究は,記録媒体に特性の異なる二層の磁性体を交換結合させた書き換え可能な光磁気ディスクでした。キヤノン株式会社入社後も引き続き同じ研究・開発を行い,スティーブ・ジョブズ氏が創業したネクストのコンピュータに,交換結合二層膜を用いた光磁気ディスクが搭載されました。