食品のおいしさは呈味成分の種類と量のみで決まるわけではなく,匂いや色,そしてテクスチャーと言われる食感も”おいしさ”の重要な要素になっていることが知られています。私たちの研究室では,化学物質の定性・定量分析ばかりでなく,物性の観点から食品のおいしさを科学して行きたいと考えています。主には力学的測定(食品レオロジー)を研究手法としています。食品の力学的な測定に関しては,化学分析における定法に相当するものはありません。何をどう評価するかは,対象に合わせ,目的に合わせて最適なものを見つけていく必要があります。
ある食品において物性評価方法が確立できれば,それを指標とした品質の変化を簡単に調べることが可能になります。こうした技術の応用すれば,食品の品質劣化を抑制する新たな保存方法の発見や製造方法の開発に繋がります。実際にアオリイカの外套筋の透明度保持方法の考案や低糖イチゴジャムの賞味期限の延長などに携わってきました。
これまで私たちの研究室では,歴代の教員がさまざまな食品の物性評価を行ってきました。その蓄積してきた経験から,ありとあらゆる食品を測り尽くすことを目指しています。特に日本の伝統食品のなかには,これまでに殆ど研究対象になったことのないものもあり,測定できる機会を楽しみにしています。
愛知県生まれ。三重大学生物資源学部准教授を経て,2021年より三重大学教養教育院教授。現在に至る。