医薬品や機能性材料の合成における有機合成反応の役割は非常に大きく、これまでにも新しく開発された多くの合成反応が利用されていますが、今なお多段階を経て合成されている化合物も少なくありません。すなわち、全合成研究で示されている問題点を取り上げ、これらを解決する新規合成反応の開発研究は重要であると考えています。よって、高度な専門知識を持った人材が社会で必要とされており、研究生活を通じた人材育成に力を入れたいと考えています。
三重結合を有するアルキニルイミンを用いた新規反応機構を基軸とする多官能基を有する含窒素ヘテロ環合成法を開発しました。具体的には、抗生物質の基本骨格の一つであるβ-ラクタムの立体選択的な合成法の開発、新規香料成分のムスコピリジンの全合成、さらに医薬品によく見られるβ−カルボリノンの効率的な合成法を開発しました。さらに、生物活性化合物だけでなく機能性物質の合成も行なっており、導電性高分子の一つであるPEDOTのモノマーEDOTを最短の2工程での合成法の開発にも成功しました。
現状では多段階合成が必要な化合物を一挙に構築できる新規合成反応を開発し、限りある地球資源の有効利用に繋げることを目標にしたいと考えています。具体的には、(1)遷移金属触媒反応を用いた高効率含窒素化合物合成反応の開発、(2)ドミノ反応を利用した高効率含窒素合成反応の開発、(3)フロー精密合成を用いた医薬品原体合成法の開発を実現したいと考えています。
ファインケミカルズ合成
フロー合成反応装置一式
福岡県出身。1996年東京理科大学大学院理学研究科博士後期課程修了(博士(理学))。1996年から1998年Stanford University(米国)に日本学術振興会海外特別研究員として留学。1998年東京理科大学総合研究所基礎科学研究部門助手。2000年三重大学工学部助教授。2007年三重大学大学院工学研究科准教授。2018年から現職
2006年-2010年 有機合成化学協会東海支部・庶務幹事
2010年〜 有機合成化学協会東海支部・常任幹事
2021年-2022年 有機合成化学協会東海支部・庶務幹事
2006(平成18)年度 有機合成化学協会東海支部奨励賞(有機合成化学協会東海支部)
2008(平成20)年度 有機合成化学奨励賞(有機合成化学協会)
2018(平成30)年度 長瀬研究振興賞(長瀬科学技術振興財団)