アフリカ、米国の医療現場・研究機関での経験から保健医療の発展には、教育が重要な役割を果たすことを強く感じた。1990年後半から始まった医学教育改革の大きなうねりの中で、小児科あるいは医学部、大学での教育改革に積極的に参画した。現在も地域社会のニーズに応える人材育成に取り組んでいる。また、小児がん領域での診療・研究に継続して従事し、患者・家族に対する支援体制の整備、日本における多施設共同臨床研究実施体制の確立に取り組んだ。現在も国際小児がん学会アジア地区代表として、WHOによるGlobal Initiative for Chilhood Cancer の活動に参加している。
国際通用性のある医学教育カリキュラムを計画し、国内では最大規模の海外臨床実習を導入した。さらに、地域社会から求められる地域医療人材の育成を目指して、三重県や市町と協力し、県下全29市町での地域基盤型保健医療教育(行動科学・社会医学授業)を展開している。がん診療・研究においては、欧米に比較し遅れていた小児がん患者・経験者に対する病名告知や長期フォローアップの向上を目指して活動している。また、アジア人小児における抗白血病薬の高感受性に関連する遺伝的背景を分子生物学的に明らかにし、関連する遺伝子多型を検出する臨床検査の保険収載を実現した。
教育においては、能動的学習や共同学習、自律的学習などを基盤とする学習効果が高く、学生や社会のニーズに応えることができる医学教育カリキュラムの実現には強いリーダーシップが必要であると感じている。従来型の授業形態から進化できていない現実を若い力と新しいテクノロジーにより変革していくことを目指したい。診療では、WHO-GICC の活動に沿って、我が国における小児がん診療の経験や基礎・臨床研究の成果をアジア・アフリカの低中所得国での小児がん治療成績の向上に活かす活動も展開していきたい。
三重大学医学部卒業・同大学院修了。JICA医療専門家としてガーナ・タンザニアでの国際医療協力に従事。米国留学後、三重大学医学部小児科助教・講師・准教授。2009年より医学系研究科医学医療教育学分野教授・医学部医学看護学教育センター長。三重大学理事・副学長等を務め、現在、医学系研究科長・医学部長。
(2022年12月時点の社会的活動) 文科省がんプロフェッショナル養成推進委員会委員、日本医学教育評価機構評価員、国際小児がん学会 Bosrd of Directors member・Asia - continental president、日本小児血液・がん学会監事・評議員、日本国際保健医療学会評議員、日本小児科学会代議員・東海地方会幹事、三重県看護職員確保対策検討会委員長、三重県地域医療対策協議会委員、慢性疾患患児・家族宿泊施設三重ファミリールーム運営委
日本小児科学会指導医・専門医、日本血液学会指導医・専門医、日本小児血液・がん学会指導医・専門医。日本医学教育学会医学教育専門家、がん治療認定医、臨床研修指導医など。