教育問題について思考する前提をなしている学校教育の現状・課題を把握する視点は一定の方向に傾きがちである。学校教育の現状・課題を把握するときに固化した視点に縛られることは建設的な思考を抑制することにつながる。日本の現代教育の「当たり前」のルーツを探り「当たり前」を再考するという姿勢をもつことにより学校教育の現状・課題と向き合うに際して柔軟かつ建設的に思考していくことがはじめて可能になると考えている。
2009年から2021年まで13年間にわたり教育職員免許状更新講習で必修講習「教育の最新事情」を講師として担当した。講習では「PISA」・「TIMSS」・「TALIS」・「全国学力・学習状況調査」の最新データとあわせて日本の現代教育の「当たり前」のルーツを提示することで、学校教育の現状・課題を把握する際の固化した視点を相対化しながら柔軟に思考する手法を受講者である現職教員等と共有することができた。
日本の現代教育の「当たり前」のルーツを探り「当たり前」を再考するという姿勢は、現職教員と共有することで学校教育の課題に関する柔軟かつ建設的な思考を広く活性化することにつながると考えている。教職大学院で担当している「プロフェッショナルとしての教師論」の授業を通じてこの姿勢の共有を目指している。現時点では教職を志望する高校生に出前授業を提供することでこの姿勢を一緒に考える機会をもつことを検討している。