有機化学工業において、種々の活性中間体を経由する反応によって、多くの製品が生産されています。反応選択性や反応性は、活性中間体の構造と反応機構の解析により合理的に説明できます。大気中や生体内で起きる反応も、活性中間体を調べることによって解析することができます。そこで、活性中間体と反応機構を、有機化学実験と、第一原理に基づく理論計算によって調べています。有機合成と、機器分析、理論計算をできるように、学生に教育しています。
持続可能な地域社会に向けて、環境にやさしいイオン液体を用いた合成法を研究しています。有機合成における有機溶媒の使用量削減により、大気汚染に関する環境負荷の減少を目指します。イオン液体を溶媒として用いる合成は、大気汚染源である有機溶媒量を削減し、後処理も抽出のみで省力化できます。そこで、イミダゾール系イオン液体を用いて、酸触媒・酸化反応・遷移金属触媒反応に対して、溶媒効果と活性中間体と反応機構を解析し、新たな非交互多環式芳香族化合物の合成に取り組んでいます。
工業化学製品の製造、大気汚染化学物質の反応や分解、芳香族化合物の発がん機構の解明、機能性材料の高性能化を目指すために、反応中間体と、反応機構、構造修飾やフッ素等の置換基の効果について、有機物理化学的手法を活用して解明します。解析が困難な事象に対しても、合理的な解釈と改良の方向性を導きます。初心者でもできる安全な有機合成手法への転換と教育を目指しています。