教授
人文学部
文化学科
日本研究
研究分野:
過去に生きた人びとが何を考え、何を感じていたのか、その実相を知るには公的記録では不十分です。歴史に埋もれてしまった《声》、そして、《声》にしようとして《声》にならなかった真実の想いの痕跡を伝えるのが文学作品の使命です。たとえば戦争や災害の犠牲になった人たちの記憶を再構成し、もう一つの歴史、あり得たかもしれない歴史を組み立てることによって、現代の私たちが、さらにより良く生きられるカギが得られるのだと考えています。
日本文学の素晴らしさを世界に伝えるために、国際交流基金の派遣教授として、北京外国語大学北京日本学研究センターやサンパウロ大学で教えたり、北京師範大学や華東師範大学、河南師範大学での講義、中国社会科学院やハイデルベルグ大学での講演を行いました。また県内では、三重県高等学校国語科研究会や放送大学三重学習センターの講師を引き受けることで、文学研究の成果を、県内の学校教育や生涯学習の場で活用していただいています。また新聞の学術文化欄や書評欄の執筆をしたり、文学や文化に関する記事を雑誌に寄稿したりしながら、各地で開かれる講演会や学習会の講師を務めています。
人文系の研究分野も近年、研究手法が大きく変化しています。まずはグローバル化です。日本語を母語とする人だけではなく、他の言語を使う多様な人びとにとっても、日本文学の価値が共有できるように、国際的に開かれた研究が必要になっています。つぎにデジタル化です。デジタル技術が進歩したおかげで、貴重な文献が手軽に閲覧できるようになりました。その一方、映像文化が大量消費されるようになるなかで、文学作品の意義が如実に低下しています。言葉と人間との関係性について、新たな知見を拓きたいと考えています。
兵庫県出身。1990年広島大学教育学部卒業、1995年広島大学大学院教育学研究科博士課程後期修了。1995~97年広島大学教育学部助手、1997~99年三重大学人文学部専任講師、1999~2007年同助教授、2007年~同教授。2003年文部科学省在外研究員としてオックスフォード大学 キーブルカレッヂ留学。
三重県史編集委員、日本近代文学会評議員、日本社会文学会理事・評議員