皆さんが安心・安全な生活をする上で,災害に遭わないことが理想です。しかし,ひとたび豪雨や地震などで,土砂崩れや液状化などの被害を受けると,生活に大きな支障が出ます。地盤の土は雨の日と晴れた日で様子が違うように,性質は千差万別です。場所や環境で性質が大きく異なる地盤に対して,災害が起きないためには,また起きた時に,どのような対応策を取る必要があるかについて研究をしています。
豪雨や地震で発生する地盤災害に対する防災・減災対策について,研究機関,行政,企業などとともに研究を続けてきています。これらの成果のうち,斜面が崩れないために施工されたグラウンドアンカーの健全性を調査する手法(SAAMシステム)の開発や,軟弱な地盤を砕石によって強くする砕石地盤改良機(エコジオ工法)の開発などを行ってきました。また,経験を生かし災害現場での対応を行うなど,地域の安全・安心な社会生活に寄与できる活動を行っています。
近年全国各地で毎年のように地盤災害が発生しています。地盤災害は人で言うと地盤が病気やけがをしたのと同じです。この「地盤の病気やけが」を防ぎ,人々が安心・安全な生活が続けられるよう,今までの研究成果や経験を生かし,どうしたら地盤が病気やけがになる前に見つけられるか,またどのような方法で地盤の病気やけがを処置できるかについて,産学官で連携し地域に求められる研究をさらに進めていきたいと考えています。
兵庫県生まれ。愛媛大学農学部助教授を経て,2006年より生物資源学研究科教授。2021年より副理事・副学長(研究・防災担当)。在外研究員として1996年英国グラスゴー大学,2002年英国ブリストル大学。
農林水産省食料・農業・農村政策審議会専門委員,国土交通省中部地方整備局防災ドクター,国立研究開発法人土木研究所招へい研究員,農林水産省地すべり意見聴取会委員などを務める。1995年農業土木学会研究奨励賞,2020年地盤工学会功労賞,2022年土木学会論文賞,2022年第49回環境賞優秀賞など受賞。