「キリシタン資料」は、16-17世紀に来日したヨーロッパ人宣教師による日本語研究の成果です。ローマ字表記の日本語や、ヨーロッパの言語研究に基づく日本語の分析からは、当時の日本語の姿がわかると言われています。この時代はちょうど古語から近代語への転換期にあり、当時の多くの言語的な変化は、外国人の視点による観察によって「記録」として残った、という側面があります。日本人の資料だけでは知り得ないことがわかるかもしれない、というのが魅力です。
三重大学人文学部の出前授業で高校生を対象に「室町時代の日本語」「日本語をローマ字で書くということ-キリシタン資料から訓令式まで-」というテーマで講師を担当しています。学校教育で学ぶ古文と現代文の間の空白を埋めたり、なぜ小学校の国語科でローマ字を学ぶのかといった理解に繋がる講義です。
海外文書館でのキリシタン関係文書の所蔵調査の成果は、日本語学だけでなく、キリシタン文献を扱う歴史系の研究者にも活用されています。
従来のキリシタン語学研究では規範意識の強い版本が研究対象でしたが、版本とは異なる規範意識で作成された写本の研究を深めることで、版本からは読み取れない当時の日本語の姿が明らかになると考えています。また、日本関係のキリシタン資料を「日本」という枠だけで捉えるのではなく、イエズス会宣教師の東アジア布教の一環という視点で、彼らが日本語をどのように捉え、どのように日本語を研究したかを明らかにしたいと考えています。
大阪府生まれ。神奈川県、アメリカ、京都府、愛知県で育つ。1997年奈良女子大学文学部卒業。2002年京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了。2004年長崎大学教育学部講師、2007年同准教授、2009年三重大学人文学部准教授、2019年同教授。
第35回日本出版学会賞(共著書『キリシタンと出版』)
2015年度日本語学会秋季大会発表賞受賞