整形外科は外傷や骨折といった身近に発生する疾患だけでなく、変性疾患や脊髄疾患など専門分野は多岐にわたります。その中で私は主に人工関節分野を専門としています。人工関節置換術は変形性股関節症や変形性膝関節症といった関節の変形に対して行われる手術であり、疼痛や機能の改善を目的としています。しかしながら、人工関節置換術を受けるすべての患者さんが必ずしも満足のいく治療を受けられているわけではありません。そのため、人工関節置換術のさらなる成績向上を目的にナビゲーションやロボットを用いた手術や使用するインプラントの評価に関する研究を行っています。
人工関節置換術においては3次元術前計画ソフトやナビゲーション・ロボットなどの手術支援ツールを用いることで正確なインプラント設置が可能であり、人工関節置換術の成績向上や合併症の低減につながる可能性が考えられます。また、手術支援ツールは若い整形外科医の技術向上といった点においても非常に有用なツールと考えます。さらに使用するインプラントの評価を行うことでインプラントの長期寿命や品質向上などにもつながる可能性が考えられます。
ナビゲーションやロボットといった手術支援ツールは各施設で徐々に使用されてきてはいるものの、依然として普及率は低いため、手術支援ツールを用いた人工関節置換術のデータを蓄積することで手術支援ツールの普及に努めたいと考えております。また、インプラントの評価は人工関節置換術における今後の発展に非常に重要な情報と考えています。現時点のインプラント評価は取り出したサンプルの解析のみとなっておりますが、将来的には体内に挿入する前にインプラントの評価が可能となるような技術を確立したいと考えています。
三重県生まれ。三重大学医学部医学科を卒業。2010年から2年間済生会松阪総合病院で臨床研修を行い、2012年から整形外科医として一般臨床に従事。2017年に博士号取得。2017年より三重大学整形外科リハビリテーション部助教として、人工関節分野を専門としている。
平成30年度 三医会奨励賞を受賞。
日本整形外科学会専門医、日本人工関節学会認定医