教授
医学系研究科
生命医科学専攻
寄附講座
研究分野: 放射線腫瘍学
放射線治療はがん治療の3本柱のひとつとされるが、欧米ではがん患者の60%以上が何らかの形で放射線治療を受けるのに対し、日本では25%未満しか放射線治療が利用されていない。放射線治療は外科療法と同じ局所療法であるが、手術に比べて侵襲が少なく、高齢者や手術不適応の方でも治療を受けられるという利点がある。また近年の放射線治療機器の急速な進歩に伴い、がん病巣近傍のみに照射することで、より副作用の少ない治療が可能になってきた。このような背景をもとに、より効果的で副作用の少ない放射線治療の方法を研究・開発するとともに、社会に放射線治療を認知してもらって欧米なみに普及させたいと考えている。
松阪中央病院に勤務していた際に、肺がんに対する定位放射線治療を三重県で初めて開始した。定位放射線治療は、小さな腫瘍に対してピンポイントで高線量を照射する高精度治療で、手術ができない患者さんでも受けることができ、高い治療効果が得られる。大学病院に戻ってからも継続して定位放射線治療の普及に努めている。また、早期の肺がんに対して密封小線源を用いて放射線を部分的に照射する方法(気管支腔内照射)を開発した。これは、気管支鏡でみえる範囲の小さな腫瘍に対し、密封小線源の特徴を生かして腫瘍近傍のみに高線量を照射する方法で、副作用が少なく、高い局所制御率が得られている。
定位放射線治療は当初、肺がんや肝臓がんなど、限られた腫瘍にしか保険適応がなかったが、2020年度の診療報酬改定で、前立腺がんや腎臓がん、膵がんなどに適応が拡大された。これをうけて定位放射線治療を受ける患者さんが増えているが、三重大病院でも安全を担保しつつ、積極的に取り組んでいきたいと考えている。気管支腔内照射を行うには専用のアプリケータと呼ばれる器具が必要になるが、現在メーカーと協力して開発に取り組んでいる。
三重県伊勢市出身。1987年、三重大学医学部卒業。同年より三重大学医学部放射線医学教室に入局。1989年~1991年、愛知県がんセンター放射線治療部レジデント。以後三重大学医学部付属病院にて放射線治療医として勤務。2009年から3年間、松阪中央総合病院で勤務した後、2012年より三重大学大学院医学系研究科放射線腫瘍学講座・教授。2019年より同・先進がん治療学講座・教授。
放射線治療専門医、がん治療認定医