教授
生物資源学研究科
生物圏生命科学専攻
海洋生物学
研究分野:
海藻の群落である藻場は熱帯多雨林に匹敵する高い生産力を持ち,沿岸域の多様な生物群集を育む重要な役割を果たしています。近年では藻場は大量の二酸化炭素を固定し,隔離する能力も極めて高いことがわかってきました。しかし,温暖化等の影響で世界中の藻場が衰退する磯焼け現象が広がっています。この要因を解明するためには,海藻と温度や光量,藻食動物との関係を知ることが必要不可欠と考えています。
尾鷲市沿岸を主なフィールドとして,磯焼けの要因について潜水調査を行なってきました。その結果,ウニの一種であるガンガゼの海藻にたいする摂食圧が,磯焼けの主な持続要因であることが明らかになりました。さらに,磯焼け海域に藻場を再生するために,ガンガゼの個体密度をどこまで減らすべきか,どのように駆除すべきかの基準を示しました。この基準により,熊野灘沿岸で,ガンガゼ駆除による藻場再生活動が行われています。
2017年に黒潮大蛇行が発生してから三重県の藻場が急激に衰退しました。これは,高水温によって,魚類やウニの摂食活動の活発化したこと,海藻の生産力が低下したことなどが原因と考えられます。藻場で魚介類を採取する海女の中には廃業する人もいて,深刻な問題となっています。ウニ駆除と異なり,魚や高水温への対策は非常に難しいのですが,海藻の生理特性や生態を調査することで,藻場再生に繋げたいと思っています。
環境省モニタリングサイト1000事業藻場分科会検討委員,2017年度日本水産学会論文賞,2021年度第25回日本藻類学会論文賞など。
潜水士,第二種安全衛生管理者