1990年代以降、日本社会でも格差拡大と貧困の拡大に人びとの耳目が集まるようになりました。この変化の背景として、戦後福祉国家の危機があります。社会経済構造が変化する中で、経済的効率性と社会的公平性を両立する社会体制のあり方について、経済学的なアプローチを試みています。
経済学とは、対象となる社会の基本構造とそのメカニズムについて分析して明らかにする学問です。私の対象は、福祉国家という戦後資本主義が構築した社会体制です。家族構造と労働市場そして社会政策の3つの社会システムによって、生活リスクが社会の中でどのように管理されているのかを考えるのが、福祉国家論の一つの視点です。私の場合、この分析視覚を活用して、行政の地域福祉政策の立案に対する助言等を行っています。
労働市場の不安定化、そして高齢化と人口減少による世帯機能の脆弱化、さらに長引く経済の低迷による行政機能の低下によって、現在の日本社会では人びとの生活リスクが非常に高まっています。このような社会経済の構造的変化が、現在の日本社会の生活基盤にどのように影響しているのかについて、実証的な研究を踏まえつつ考察したいと思っています。
大阪市出身。2004年に人文学専任講師として着任。2016年より現職。2006年英国ブリストル大学客員研究員。
2010年より志摩市地域福祉アドバイザーを務め、第2次・第3次・第4次の「志摩市地域福祉(活動)計画」の作成に関わる。2019年より松阪市定住自立圏共生ビジョン懇談会委員、2020年より津市健康づくり推進懇談会委員等を努める。