近年,様々な産業分野でDX(デジタルトランスフォーメーション)に向けた情報化とデータ活用に関する動きが活発になっている,水産業においても資源管理や生産・加工・流通の効率,6次産業化にICT(情報通信技術)が大きな役割を担っており,海洋環境のモニタリングにおいてもICTが情報量を格段に向上させている.ICTを駆使しつつも,主に市民科学的アプローチを用い,海や沿岸域を動く移動体や利用者の行動から様々なデータを収集することでビッグデータを形成し,水産や環境に係るモニタリング技術を開発している.
沿岸漁業を営む漁船の協力により,長期間にわたる広域・高頻度な海底地形データ収集手法を開発している.ダムや港といった人工構造物の建設,気候変動による降雨や波浪の変化に伴った海岸侵食が世界的な問題になっており,沿岸域の土砂管理技術では,コストパフォーマンスの良い地形モニタリング技術が求められていた.これに対し,市民科学的アプローチで漁船から海底地形に関するビッグデータを収集・形成することで,従来型の測量では達成できないカバレッジや頻度での地形データを生成することを可能にしている.また,同時に水温データも収集することで,漁業者にとってニーズの高い海水温マップを生成することも可能になった.
現在,静岡県を中心に沿岸漁業から環境ビッグデータを作り出しているが,これらを全国・世界的に展開することが今後の課題である.また,取得した情報を高度活用するためのデータ分析・解析技術の開発のほか,社会還元のための情報提供サービスの構築も行っていきたい.
伊勢湾再生海域検討会委員(2022年度〜)
愛知県栄養塩管理検討会議委員(2022年度〜)