バイオマスは植物が大気中の二酸化炭素を太陽光のエネルギーを利用して固定化したものがもとになっています。すなわち、太陽の光エネルギーをためていると言えます。このバイオマスをエネルギーとして取り出せれば、待機中の炭酸ガス濃度を上昇させることなく、電気などを作り出すことが可能です。バイオマスのなかでも私たち動物が直接消化して利用できないものは廃棄されていますが、これらを分解してエネルギーに変えることができる微生物が多く存在します。これらの中には酸素のない環境で生育することができるものが存在し、水素ガスを生産する細菌がいます。このような最近の力を利用して、ヒトが食糧として利用することができないバイオマスから水素ガスを生産することを目標にしています。
微生物を利用した物質の生産は、工学的な処理に比べて速度が遅く、現代の工業化社会においては実用性に問題があります。少しでもその効率を上げるため、ゲノム編集などを駆使して改良を続けていますが、実用化にはまだまだといった状況です。
微生物の機能を向上させるためには、培養方法の最適化と微生物の機能そのものを向上させる方法があります。最終的にはこれらを組み合わせて最適化することで最大の効率を得ることができます。それには、微生物の機能そのものを理解する必要があり、現在はその段階にとどまっています。今後、水素を生産するメカニズムの解明を通じてより効率的な培養と水素ガス生産の方法を探っていきます。