冠動脈疾患を正しく評価するには、冠動脈の形態を見るだけではなく、左心室の運動や血流、梗塞などを含めた包括的評価が必要です。心臓CTと心臓MRIは冠動脈疾患に関するそういった包括的情報を提供することができます。その包括的情報を、患者さんが将来生じる心筋梗塞などに対するリスク評価に活かすことが重要です。
三重大学病院ではCT、MRIを用いて冠動脈疾患に関する包括的情報を与える心臓検査を実施しています。心臓CT、心臓MRIが提供する包括的情報が、心筋梗塞などのリスク評価に有用であることを複数の論文発表によって示しました。その結果、CT、MRIを用いた包括的心臓検査は三重大学病院だけでなく、三重県内の複数施設で定着しつつあります。
心臓CT検査の課題は、複数の検査項目があるため被ばくが多くなることです。Photon-Counting CTという新しいCT装置が2023年、三重大学病院に導入されました。この装置を用いて高画質と低被ばくを両立したCT画像を提供することができ、包括的心臓検査への貢献が期待されています。心臓MRI検査の課題は1時間以上に及ぶ検査時間の長さです。これは、検査項目のスリム化、時間短縮技術・深層学習技術の応用、複数項目の同時撮影などによって克服される可能性があり、そうなれば患者さんの負担が大きく軽減した検査が実現できます。
三重県生まれ。2013年京都大学医学部医学科卒業。三重大学医学部附属病院放射線科、桑名市総合医療センター、市立四日市病院に勤務。2021年博士(医学)取得。2023年より現職。
放射線科診断専門医、日本医学放射線学会研修指導者