准教授
人文学部
文化学科
国際言語文化学
研究分野: フランス文学
自己自身について語るとき、人生のいつ頃のことを扱うのか、またどのように書くのかといった問いは避けて通れません。とくに自己の語りが多様化した、20世紀後半以降のフランスの文学作品を研究することで、「私」のあり方の多様性について考えています。
自己について語ることは、多くの場合、それが「どのように読まれるか」という問題意識と密接に結びついています。そこで、博士論文ではナタリー・サロート、ミシェル・レリス、ロラン・バルト、アニー・エルノーといった作家を対象として、彼らの作品にはいかなる読者像が想定されるのかを分析しました。結果として、自伝的作品の語り手がその言説を宛てる人物像は、たえず逃れ去る自己像として解釈しうることを示しました。
とくに1980年代以降、フランスにおける自伝的作品はその断章性を強めていきます。「物語」からの逸脱は、出来事を時系列に語らないことを意味しており、こうした断片的な記述は、他者にも共有されうるものでしょう。今後の研究では、自己の記述がもつ歴史・社会的側面を視野に入れつつ、個人的な「人格」の変遷に留まらない自他の関係性を、現代のテクストのなかで探ってゆければと思います。
京都大学大学院文学研究科修士課程、パリ・シテ大学博士課程を経て、2024年より現職。学部でストラスブール、博士課程でパリにそれぞれ留学経験があります。
日本フランス語フランス文学会 編集委員(2025年5月〜現在)
DALF C2
第二種衛生管理者