主にピアノ演奏実践を通して,演奏法および作品解釈の研究をしています。私たちは数百年前に作曲,記譜された「楽譜」を頼りに音楽を知り,楽しむことができます。しかし録音技術の無かった時代に作曲された音楽作品については,実際に我々が音を出しながら記譜を辿っていくことで,楽譜に書き表すことの出来なかった解釈や,記譜に秘められた音楽言語を響きとともに発見することができます。そのプロセスはまるで理科の実験のように面白い営みです。
合唱や吹奏楽,オーケストラのように大勢で音楽を作り上げ,奏で,楽しむ行為に比べると,ピアノ演奏は大抵1人で一見すると孤独に見えます。(時に連弾もありますが) 音楽は“みんなで一緒に演奏するから楽しい”と言われることが多いですが,1人で1つの楽器と対峙し,目の前の楽譜と自らの奏でる音を頼りに音楽作りに没頭するその行為は,とても深遠で価値のある時間だと考えています。また1人1人が音楽に向き合う行為そのものが,尊く価値があることをより多くの人に伝えるべく演奏会,講演を通して発信しています。