救急、集中治療の領域ではいつ重症患者が発生するかわからず、常に盤石な体制をしく必要があります。しかし医療従事者は交代勤務により睡眠が不規則になることに加え、緊迫感や喪失感を味わうことによる身体的・精神的負担から、バーンアウト症候群のリスクが高くなります。バーンアウトが進行すると医療従事者本人のウェルビーイングが著しく低下し、離職にもつながり医療体制の維持や医療安全の担保が困難となります。これらの医療従事者がバーンアウトせず、仕事にやりがいを見出せるためにウェルビーイングに影響する要因や介入方法をデータ科学の手法を用いて研究しています。
データ科学者と精神科医師と共同で、ウェアラブルセンサーとそこから得られるデータを活用して、不規則な睡眠からくる睡眠障害に対して現在の睡眠・行動パターンから予想される将来のウェルビーイングを提示し、さらに睡眠専門医師のアドバイスを合わせることで、より個人個人に特化した認知行動療法をベースとした睡眠改善プログラムを開発しました。臨床研究を行い、睡眠時間の延長と睡眠満足度の向上を認めました。睡眠に悩んでいる交代勤務医療中儒者にはウェアラブルセンサーと深層学習を合わせた新しいセルフケアは有効であると言えます。
バーンアウトと仕事のやりがいに影響する因子や影響する度合いは個人差があり、バーンアウトにも異なるグループがあります。さらに時間の経過とともに、行動パターン、気分、仕事の負荷は変動します。時系列データ解析やさまざまな種類のデータを混合するマルチモーダルデータ解析を用いてバーンアウトのグループ分類を行い、個人に特化したバーンアウト予防プログラムの開発を行います。
機械学習を用いて翌日のウェルビーイングを予測し、アプリ上で提示しました。ウェアラブルセンサーの記録が勤務記録とともにリアルタイムで利用者に表示され、自身の振り返りに活用できるようになっています。
4週間の睡眠改善プログラムの効果を提示しています。ウェアラブルセンサーで記録した平均睡眠時間と、主観的睡眠の質(ピッツバーグ睡眠質問表)どちらも統計学的に有意な改善を認めました。
愛知県出身、三重大学医学部医学科を卒業しました。
救急医、集中治療医の専門資格を持ち、ICUに従事しながら、医療従事者の睡眠障害やバーンアウト症候群発症に関する研究を行っています。
救急科専門医、集中治療専門医