講師
医学系研究科
看護学専攻
基礎看護学講座
研究分野: 実践基礎看護学分野
集中治療室(ICU)は重症な患者さんを生命維持や異常の早期発見のため、24時間体制で治療・管理しています。そのため睡眠が十分にとれず、それが一因となりせん妄という状態に陥ってしまう患者さんも少なくありません。せん妄の発症は、在院日数の増加や医療コストの増大だけでなく、死亡率の上昇や退院後のALD低下などにも影響を及ぼします。したがって高齢化が進む現代社会においてせん妄予防は緊喫の問題であると考え、現在ICU入室患者に対するせん妄予防ケアプログラムの開発に取り組んでいます。
睡眠における従来の研究では、質問紙調査など主観的な研究が多く、客観性に欠けることが課題でしたが、本研究では生理学的指標である脳波を用いた客観性に特化した研究を特徴としています。
本研究ではNetwork meta-analysisにて、睡眠促進ケアがせん妄予防に有用であることを明らかにしました。また臨床研究において、ICU入室患者の睡眠状況を検討したところ、睡眠ステージの周期性変化は認められず、通常の睡眠と異なった睡眠状況であることが明らかになりました。さらに、夜間ケア介入後にα波の有意な増大を認めたことから、ケア介入により睡眠の浅睡眠化をきたし、十分な睡眠が獲得されていないことが示唆されました。これらを踏まえ現在は睡眠覚醒リズムを調節するための日中の午睡導入の有用性について検証しています。
今後は、現在遂行中の研究から得られた知見に基づき、せん妄予防ケアプログラムの開発を行ない、クリティカルケア領域におけるスタンダードケアとなることを目指しています。そしてICU患者におけるせん妄発症率の減少に寄与することで患者さんの早期離床やICU滞在期間の短縮、医療費削減に貢献できるよう取り組んでいきたいです。
研究の全体像 ~過去・現在・未来~
ICUに入室している患者さんが睡眠中にケアを受けたときの脳波の変化
大阪府内の集中治療室での勤務を経て、集中治療室に入室する患者の環境や睡眠についての研究を行っています。大学院では看工融合講座にて看護工学や統計学などを学びました。
現在はその経験を活かし、ヒトに起こる現象を看護学・工学・統計学などさまざまな視点から多角的に捉えた研究に取り組んでいます。
日本集中治療医学会
日本超音波検査学会
日本看護研究学会
看護師
保健師