首脳会談などの国際ニュースを見ていると、世界は国別に色分けされた世界地図のように成り立っているように思えてきます。世界の舞台に登場してよいのは、大地の一部を領土として所有する国家のみ、さらには国家の代表者のみで、民衆がいないのは当然のように思えてきます。民衆はローカルでナショナルな存在にすぎないのでしょうか。グローバルな世界を生き、それに影響を与えたり、さらにはそれを作り替えたりしてきたのでないでしょうか。世界は世界地図ではない。そう考えたのがきっかけです。
まとまった成果としては、拙著『アンチ・ジオポリティクス』があります。手に取っていただければ、うれしいです。
世界がますます不均等、不平等、不安定となり、戦争、殺戮、破壊が公然と行われる現在、その行く末を見通すという名目で、巷では「地政学」への需要が増大しています。地政学はしかし、このような世界の分断、対立、紛争に寄与してきた帝国主義的な国家中心の地理的知識です。それゆえ、地政学を批判的に検討しつつ、イタリアをはじめ各地の民衆の動きにならいながら、この土地と、国境の彼方の遠い土地とを共鳴、連帯、繋ぎ合わせるような、地理的想像力と地理的世界を探求することが課題です。
日本地理学会賞(優秀著作部門)2025.03 日本地理学会